食品ロスはなぜ問題?環境に及ぼす悪影響とデメリットとは?

まだ食べられるのに廃棄される食品ロス。もったいないことは理解できるけれど、そこまで大きな問題なの?そう思われている方も多いのではないでしょうか?
食品ロスは決してもったいないという感情論だけではなく、私たちの生活に大きな影響を与える社会問題です。食品ロスはなぜ問題なのか?食品ロスの問題点やデメリットについて、7つの視点から見ていきましょう。
温室効果ガスと地球温暖化

数十年前から社会問題とされてきた地球温暖化ですが、最近の異常気象などで他人事ではないと感じている方も増えてきているのではないでしょうか?
食品ロスは、地球温暖化の原因の一つである温室効果ガスを大量に排出することでも大きな問題になっています。
食品の生産から流通、そして捨てられるまでの過程では、多くの温室効果ガスが排出されています。
温室効果ガスには、馴染み深い二酸化炭素以外にも、メタンガスや一酸化二窒素、フロンガスなどがあります。中でもメタンガスは温室効果ガスの中で2番目に多い排出量となっており、食品ロスとも深い関係があります。

二酸化炭素の約25倍の温室効果があるといわれているメタンガスは、食品を埋め立て処理する際に排出されます。
日本では食品廃棄物を燃却処理しているため、焼却の際に排出されるCO2が問題視されています。一方で、世界の多くは食品廃棄物を埋め立て処理しており、埋め立ての際に排出されるメタンガスが問題となっています。
食品の生産・流通の過程でも多くの温室効果ガスを排出し、さらには食品ロスを廃棄処分する際にまで、CO2やメタンガスなどの温室効果ガスを排出しています。
過剰な食品生産や食品廃棄は無駄な温室効果ガスを排出し、温暖化による干ばつなどの自然災害から、不作など農業への悪影響が危惧されています。
地球温暖化を防ぐための対策としても、食品ロス削減は取り組むべき大きな社会問題です。
農地のための森林破壊

食品ロスの問題は、農地開拓による森林破壊にも深く関係しています。
熱帯雨林の森林破壊の約8割は農地開拓とも言われており、農地を確保するためにたくさんの森林伐採が行われています。
また、森林は二酸化炭素を吸収する役割も持っており、森林破壊が進むことで温室効果ガスが増加し、地球温暖化にも大きな影響を与えています。
農地開拓のために森林破壊が進み、地球温暖化に大きな影響を及ぼしている一方で、世界で毎年生産される約40億トンの食料のうち3分の1にあたる13億トンは廃棄されているというのが現実です。
食品ロスを減らし、無駄な食料の生産を抑えることは、地球上の自然を守ると同時に、地球温暖化をはじめとする環境問題を防止することにもつながります。
水資源の危機

食品ロスと水資源。一見すると関係ないようにも思えますが、食品ロスは水資源にも大きく影響しています。
食料の生産には、野菜であってもお肉であっても水が必要不可欠です。
例えば、牛肉を1㎏作るのに必要な水は約20,000ℓといわれています。牛肉1㎏というと、お店で食べるステーキ200gの5人分にあたります。
つまり、ステーキ5人前に必要となる水が約20,000ℓ、一般的な家庭にある浴槽(200ℓ)の100杯分もの水が必要になってきます。
また、ハンバーガー1個をつくるのに必要な水となると、原料となるパン(小麦)、トマト レタス、牛肉が生産される過程で使われた水の量を計算して3000ℓとなります。
まだ食べられる食品を捨てるということは、生産される過程で使われた水までをも無駄にするということです。
私たち日本人の生活からすると、水不足を想像することは難しいかもしれません。
しかし、現実に今、世界では何億人もの人々が安全な飲み水さえ入手できない状況に苦しんでいます。
さらには、2050年には世界人口の約40%が水不足や水で不便を感じる状態になると予測されており、東京を含むいくつかの都市が水不足に陥る可能性が指摘されています。
食品ロスが減ることで食品の過剰生産が減り、大切な水資源を残すことができます。
今の子供たちが大人になる頃、水不足で悩まされるようなことがないよう、まずは身の回りの食品ロスから減らしていきましょう。
9人に1人の飢餓問題

食品ロスが問題視される理由として、誰しもが思い浮かぶのが飢餓問題ではないでしょうか?
全世界で生産されている食料は毎年およそ40億トン。これは全人口の食料をまかなうのに十分な量です。
しかし、40億トンの食料のうち、約3分の1にあたる13億トンの食料が毎年捨てられています。
一方で、世界中では約8億2千万人もの人々が飢餓に苦しんでいます。8億2千万人は世界人口の9人に1人という割合です。
これだけ多くの人々が、同じ時代に食料がなく苦しんでいる現実があります。
日本国内の食品ロス量に目を向けると、2018年にWFP(国連世界食糧計画)が行った食料援助量よりも、日本の食品ロスの方が多いという結果が出ています。

好き嫌いや食べ残し、消費期限の管理など、一人ひとりが食品ロス削減を心がけることが、飢餓問題や貧困問題の解決へとつながります。
2050年には1.7倍の食料供給が必要

国連は2050年に世界の人口が97億人、2100年には109億人にまで増える予測を立てています。
世界的な人口増加でもっとも危惧されているのは「食料不足」です。
2020年に生まれた子どもが30歳になる頃、つまり2050年には現在の1.7倍の食料が必要になると考えられています。
日本では少子化が問題視されていますが、世界の一部地域では急激な人口増加が進んでおり、世界的な食料不足が予測されています。
近い将来には世界的な食料不足となる可能性があることからも、食品ロスは解決すべき社会問題とされています。
80兆円の経済損失

食品ロスで失っているものは地球資源だけではありません。
最終的に廃棄された食品ロスにも、生産や運搬などに多くの時間と労力、そしてお金が使われています。
世界で毎年捨てられている13億トンの食品の経済的損失は約80兆円といわれています。
日本の年間の国家予算(100兆円)の8割ということを考えると、どれだけ多くのお金や時間、労力が無駄になっているのかがよくわかります。
「どれだけ経済的な損失があったとしても、私たち消費者には関係のないこと」とも思われがちですが、それは大きな間違いです。
事業者が食品ロスを処理するためにかかったコストは、当然ながら生産コストとして計上され、少なからず商品代金に影響しています。
普段の買い物でそのようなコストを間接的に負担していることを考えると、食品ロスは改善すべき問題といえるでしょう。
また、京都市が行った試算によると、日本の家庭から出る食品ロスをお金に換算すると、年間1世帯当たり(4人で推計)約6万円になります。
食品ロスを削減するということは、家計にも大きなメリットがあるということです。
食品廃棄物の処理にかかる巨額の税金

食品ロスに関する金銭的なデメリットにはもう一つあります。
飲食店やスーパー、コンビニなどの売れ残りや食べ残しは、ほとんどの場合家庭ごみと一緒に燃却処分されています。
つまり、これらの事業者から出る食品ロスの処分には税金が使われているということになります。
一般廃棄物の処理に必要な経費は年間2兆円。
一般廃棄物のおおよそ半分は食品由来の廃棄物になるので、単純計算では食品廃棄物を処分するために1兆円もの税金が毎年使われているということになります。
食品ロスを減らすことで税金の無駄遣いを減らし、より有意義な税金の使い方ができるようになります。
最後に
世界的な社会問題となっている食品ロス。
それは単にもったいないというだけではなく、多くの資源をムダにし、地球温暖化をはじめとする環境問題の原因となっています。
そして近い将来には、日本においても食品ロスの直接的な影響を受けることが考えられます。
年間600万トンを超える食品ロスの半分は家庭から出ています。まずは、一人ひとりの意識により、家庭から食品ロスを減らす努力を始めてみましょう。